竹原小早川氏

たけはら こばやかわ し

 安芸国沼田郡新庄(都宇荘)の木村城を本拠とした国人領主。鎌倉期に小早川政景が父から都宇荘や竹原荘などを譲られたことに始まる。沼田小早川氏の分家筋にあたる。

竹原小早川氏の居城となった木村城跡。
竹原小早川氏の居城となった木村城跡。

鎌倉期の危機

 鎌倉末期、政景の子の景宗の代で幕府によって都宇・竹原荘を没収された。このため鎌倉末期から南北朝期の動乱では足利尊氏に味方。その軍功により旧領を回復し、足利氏直属の国人として勢力拡大の足がかりを築いた。

南北朝・室町期の拡大

 南北朝・室町期は安芸沿岸を西方に向けて勢力を拡大した。正平十三年(1358)、三津村の地頭職を獲得し、15世紀後半には内海衆(現在の呉市安浦町内海の勢力)を傘下におさめた。16世紀前半頃までには波多島(現在の呉市音戸町)あたりまでを支配下に置いた。

 室町期、竹原小早川氏は周防の守護大名・大内氏に近い立場をとり、親幕府の本家・沼田小早川氏との対立が激しくなっていた。応仁・文明の乱では大内氏に従って西軍に味方。東軍に味方した沼田小早川氏の居城・高山城を攻撃している。

毛利氏による併合

 天文十二年(1543)、当主興景が早逝。子が無かったため、安芸吉田の国人・毛利元就の三男隆景を養子に迎えて家督を継がせることになった。後に隆景は沼田小早川氏の家督も相続し、沼田、竹原の両小早川氏が統一することとなった。

Photos

木村城下、小早川氏の御館推定地の近くにある「小早川毛墓地」。宝篋印塔や五輪塔がならぶ。宝篋印塔は主に16世紀のものと推定されている。 竹原小早川氏の氏寺、法浄寺跡にあった宝篋印塔。現在は竹原市の町並み保存地区内にある歴史民俗資料館に移されている。真ん中の宝篋印塔は14世紀中頃のものと推定されている。右隣の五輪塔は間違えられたか基礎が宝篋印塔のものとなっている。その宝篋印塔の基礎部分は15世紀前半のものと考えられている。 木村城の本丸跡。 木村城跡の頂上部から眺めた城下の風景。 木谷(広島県東広島市安芸津町木谷)の風景。中世、木谷を含む三津は竹原小早川氏の外港となった。

当主

  • 小早川政景:小早川茂平の三男。父から都宇・竹原荘を譲与され、竹原小早川氏の祖となった。
  • 小早川景宗:政景の子。父の死後、相続問題がこじれて鎌倉幕府に都宇・竹原荘を没収された。
  • 小早川祐景:景宗の子。父とともに足利尊氏に味方。鎌倉幕府や南朝方と戦い、奈良で討死した。
  • 小早川重景:祐景の子。父の討死により、祖父景宗から都宇・竹原荘などの所領を譲り受けて家督を相続した。
  • 小早川義春
  • 小早川仲義
  • 小早川弘景(陽満)
  • 小早川盛景
  • 小早川弘景
  • 小早川弘平
  • 小早川興景:弘平の子。妻は毛利興元の娘。若くして病没し、毛利元就の三男隆景が養子となって家督を継いだ。
  • 小早川隆景:安芸吉田の国人・毛利元就の三男。興景が継嗣無く没したため、養子となって家督を継いだ。

一門

  • 小早川徳平:義春の子。仲義の弟。父から大崎上島等の所領を譲られて独立した。子孫は大崎下島に進出。
  • 草井越中守
  • 草井和泉守
  • 草井蔵人
  • 草井式部少輔
  • 包久景勝:隆景に仕え、水軍を率いて活躍。豊前蓑島での大友氏との海戦や、織田氏との木津川口の戦いに参加。
  • 包久景真
  • 乃美員平(瀬戸式部丞):沼田小早川氏の一族。竹原小早川氏に帰順して一門の扱いを受けた。
  • 乃美家平:員平の子。
  • 乃美家氏:乃美是景の子。沼田小早川敬平の甥。乃美家平の跡を継ぎ、竹原小早川領の波多見島支配を担当。
  • 乃美(瀬戸)賢勝:家氏の子。波多見島瀬戸城主となり、竹原小早川の西方経略を担った。
  • 乃美(瀬戸)宗勝:賢勝の子。

家臣団

  • 木谷備中守(初代):木谷氏の初代。備中守。木谷に菩提寺として大慶寺(現在の慶寿院)を建立した。
  • 木谷宮内少輔:弘平に仕えた。沼田小早川氏の福鶴丸を弘平の養子に迎えた際に関わった。
  • 木谷備中守:大永三年に陥落した鏡山城の城将、蔵田房信の妻子を預かったことが『陰徳太平記』にみえる。
  • 木谷景忠:小早川警固衆の一翼を担い、大友氏や織田氏との戦いに加わった。
  • 裳懸又五郎:小早川弘景(二代)により、京都での上番任務を割り当てられた一人。
  • 裳懸盛聡
  • 裳懸六郎
  • 裳懸景利
  • 南杢助
  • 南菅兵衛尉
  • 手嶋景繁
  • 光清左近将監:小早川弘景(二代)により、京都での上番任務を割り当てられた一人。
  • 風早式部
  • 日名内左京亮:小早川弘景(二代)により、京都での上番任務を割り当てられた一人。
  • 日名内慶岳
  • 有田経道
  • 有田景勝
  • 有田十二郎
  • 林甲斐守
  • 林次郎左衛門:林甲斐守の養子。実父は檜垣新太郎。
  • 檜垣新太郎:天文年間、大崎島や能美島の合戦で活躍した。
  • 荒谷彦次郎:小早川弘平に対し銭や米を調達した。
  • 荒谷吉長:三永村に作職を持ち、「宿」の運営にも関わった。
  • 神保掃部助
  • 神保信胤:大内氏被官。竹原小早川氏との関係は不明。永正年間に黒瀬村助実の女子畑などで所領を買得した。
  • 能美兵庫助:安芸国能美島を本貫とする能美氏の庶流か。

居館・城郭

  • 木村城