松前
まつまえ
海峡を隔てて本州・津軽半島と最短距離にある松前半島先端部に位置する港町。中世、蝦夷地和人拠点の中心的地位にあった。
蝦夷地の和人拠点
康正二年(1456)、蝦夷から出羽・小鹿島に渡った安藤政季(檜山安東氏の祖)は道南の勢力圏を三つに編成し、その一つである「松前守護」に大館館主・下国定季を配している。
15世紀後半からのアイヌの蜂起は16世紀に入ってさらに激化し、大永五年(1525)には和人集落は上ノ国と松前周辺を残すのみとなったといわれる。この過程で永正十一年(1514)、道南の有力者として台頭していた蠣崎氏が本拠を上ノ国から松前大館に移した。松前は大幅に縮小した道南和人勢力圏の中心都市となっていく。
蠣崎氏による交易管理
『新羅之記録』によると、蠣崎氏は「松前守護」の地位の承認を得るため、諸国から松前に来航する「商船旅人」より「年棒」を徴収し、その「過半」を檜山安東氏へ進上することを約束したとされる。さらに天文二十年(1551)、アイヌとの講和が成ると、諸国から来航する商船から年棒を徴収し、これを「夷役」として「西夷」と「東夷」の両酋長に配分することや、アイヌの商船の往還する際の方式など、アイヌと和人との交易方法も定められた。
アイヌとの交易
17世紀初頭に松前に渡った宣教師によれば、東西各地から来航する蝦夷人らは松前に鮭や鰊、白鳥、猟虎皮、鷹、上質の絹布などをもたらし、日本からもたらされる米や酒、小袖、木綿などと交換していたという。戦国期、アイヌは秋田湊などにも来航していたが、報告状況はある程度は中世にも遡ると思われる。