陳 元明
ちん げんめい
戦国末期、大友氏領国の中心都市・臼杵に居住した渡来系の漆喰塗り職人。
陳氏の系譜
「陳氏系図」によれば、陳氏は陳李長が中国江蘇省揚州府から永正三年(1506)に肥前に渡来し、その子・覚明が永正十二年に豊後府内に定住。その後、陳義明を経て元明の代で臼杵の唐人町に移住したとされる。これについては文禄二年(1593)の「豊後国海辺郡臼杵庄御検地帳」の唐人町の名請人の中に「大仏しっくい御免」の肩書きがついた元明の名をみることができ、元明が臼杵唐人町に居住していたことが確認できる。
方広寺大仏殿建立への動員
天正十六年(1588)、豊臣秀吉は島津氏や松浦氏、大友氏らを通じて彼らの領内居住の中国人、日本人の漆喰塗り職人を京都の方広寺大仏殿建立のために動員した。元明もこれに参加していることから、彼が高度な職人技術を有していたことがうかがえる。
天正十七年八月、大仏が完成した時点で秀吉の御朱印状が元明に対して発給されている。文禄二年閏九月の検地奉行・山口宗永の書状から、この御朱印状が大仏造立の褒賞として元明に与えられた「国役」と「屋敷御年貢」(屋敷料)の免除特権を認めるものであったことが分かる。
上記の「検地帳」には元明以外にも「大仏しっくい御免」として徳鳳、九右衛門、平湖が記されており、彼らも元明同様の特権を得たものと思われる。
関連人物
- 陳義明:元明の父。
- 陳覚明:元明の祖父。
その他の関連項目
参考文献
- 鹿毛敏夫 「戦国期豪商の存在形態と大友氏」 (『戦国大名の外交と都市・流通―豊後大友氏と東アジア世界―』 思文閣出版 2006 )