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硫黄（豊後）
いおう
豊後国の山岳地帯において産出された硫黄。中世、遣明貿易に関与した大友氏によって中国にも輸出された。
九重連山では現在も活発な火山活動がみられる。
遣明船の積荷
寛正六年（１４６５）の第十二次遣明船派遣に祭し、「御商物」として大友氏と島津氏によって硫黄四万斤が調達されて門司、博多で積み込まれた（『戊子入明記』）。文明十五年（１４８３）には、第十四次派遣に先立って室町将軍・足利義尚は大友政親に硫黄の上納を要求している。
豊後国内の硫黄生産地
豊後国内で大友氏が掌握していたとみられる硫黄産出地としては、由布院の伽藍岳と鶴見岳、九重連山の硫黄山がある。伽藍岳は別名を硫黄山とも呼ばれ、現在でも火山活動を継続している。鶴見岳も近世の『豊後国志』に「多産硫黄礬石」と記され、直入・飯田両郷の境界にある九重連山・硫黄山も『豊後国志』に「多産硫黄」と記されている。
大友氏による生産地、搬出ルート掌握
貞治三年（１３６４）の八代大友氏時の代の直轄所領を示す文書には「同国（豊後）由布院並柳・酒久里・塚原以下所々」とある。大友氏が伽藍岳、鶴見岳の硫黄産出地とその搬出拠点を直轄下においていることが分かる。
また貞治三年の所領にも「同国直入郷付、田野・阿蘇野」がみえ、大友氏が直入郷と玖珠郡飯田郷の田野、直入郡朽網郷の阿蘇野を直轄領とし、硫黄山と府内へと通じる硫黄の搬出ルートを掌握していたことがうかがえる。
「硫黄屋」の存在
１６世紀後半、大友氏に関係する商人に「硫黄屋」がいた。大友義鎮に茶道具を譲渡する程の財力を持っていたという（『大友興廃記』）。戦国期、大友氏は独自に海外貿易を行っており、その際も硫黄は重要な商品であったと思われる。