角屋 七郎次郎

かどや しちろうじろう

　戦国期、伊勢国大湊、後に駿河国清水を拠点に活動した廻船商人。

大湊の有力商人

　永禄三年（１５６０）十二月、「七郎次郎」が「次郎兵衛」や「浄感入道」、「右京進」らとともにそれぞれ銭二百文を大湊老分衆（老若）に貸していることが史料にみえる。

　 天正元年（１５７３）十月、織田氏家臣・塙直政と北畠氏奉行人が大湊惣中に対し、七郎次郎が今川氏真から預かった茶湯道具を進納するように命じている。これについて、老分衆は北畠氏重臣宛の案文の中で、件の茶湯道具は既に去秋に氏真に返していること、七郎次郎も今は浜松に下っていて大湊にはいないとしている。

関東との廻船事業

　天正五年五月、関東の北条氏が七郎次郎に「無異議可令出船旨」の虎朱印状を発給している。七郎次郎の廻船は大湊・関東間を運行していたとみられ、このため経由地の徳川氏や今川氏ともつながりがあったと考えられる。

駿河清水湊に移る

　 近世成立の『角屋記録』によれば、天正十年（１５８２）に徳川家康の駿府入城とともに、七郎次郎は駿河清水湊に「蔵屋敷・居屋敷等」を拝領して被官化し、大湊から駿府へと詰めるようになったという。同記録には、同年八月、四百石船一艘に対し、分国中諸湊出入役以下の諸役免除を記した七郎次郎宛の徳川氏朱印状写も収録されている。

　ただ天正十七年（１５８９）十二月、江斎（七郎次郎）に対して、蒲生氏郷の奉行人が大湊にある二艘の廻船のうちの一艘を桑名へ回送し、直ちに駿河へ遣わすことを要請している。七郎次郎が依然として大湊に拠点を持ち、徳川氏からもある程度独立した存在であったことが窺える。

関連人物

  • 角屋七郎左衛門
  • 角屋助五郎
  • 角屋彦五郎

その他の関連項目

参考文献

  • 小島広次　「伊勢大湊と織田政権」　（『日本歴史３７２』）　１９８０
  • 綿貫友子　「戦国期東国の太平洋海運」　（『中世東国の太平洋海運』　東京大学出版会　１９９８）