阿波賀

あばが

　越前朝倉氏の本拠・一乗谷の下城戸に隣接する市町。一乗谷の商業地区として繁栄した。三国湊へつづく足羽川に接し、さらに北の庄と美濃を結ぶ美濃街道が通る交通の要衝に位置する。一乗谷に先行して形成されたとみられ、一乗谷成立後は「一乗の入江」と呼ばれる川湊として一乗谷と外界との結節点となった。

国衙米の換金、送金

　京都大徳寺子院の真珠庵（朝倉氏から足羽郡太田保「二上」の国衙領の半済分を寄進された）に残る「真珠庵文書」によれば、真珠庵の収入になる国衙米は、阿波賀の「倉」に収納され、阿波賀の商人・三比屋が扱った。この米は「一乗ノ和市（換金レート）」にしたがって換金され、為替で京都に送金されている。このことから、阿波賀はおそらく美濃街道や足羽川舟運を通じて運ばれる周辺物資の集散地を担っていたことが推測され、京都への為替を組む商人も活躍する発展した町場であったことが分かる。

唐人の在所

　また阿波賀には「唐人の在所」があったとされる。三国湊や敦賀から入る輸入品が「唐人」によって扱われていたと思われる。

阿波賀見物

　天文十二年（１５４３）四月、一乗谷を訪ねた儒学者・清原枝賢は、二十九日、阿波賀の見物に出かけている。『多聞院日記』にも「今在家店屋見物しおわんぬ」（永禄十年十一月二十三日条）とある。阿波賀が見物の対象となるような賑やかな繁華街であったことをうかがわせる。

人物

  • 三比屋

参考文献

  • 小泉義博　「第五章　中世後期の経済と都市　第一節　産業・交通の発展　二　交通路の発達と市・町の形成」（　『福井県史　通史編２』　１９９５）
  • 小野正敏　『戦国城下町の考古学　一乗谷からのメッセージ』　講談社　１９９７