海辺領主・小松氏の滅亡年代の推定
はじめに 『十二国記』という小説をご存知でしょうか? 「小説家・小野不由美が、1992年から書き続けている壮大なスケールの異世界ファンタジー」(十二国記公式ページ)です。ですが、長くなるので説明は割愛します。 人や国の運命・あり方などについて、いろいろ考えさせられる作品で、個人的にはとても好きでした(過去形なのは・・・言わずもがなのことなのでこれも割愛)。 この『十二国記』の舞台となる世界には、文字通り十二の国があるのですが、その一つに「雁」(えん)という国があります。この雁国の王は、小松三郎尚隆といい、元は室町・戦国期の瀬戸内沿岸部の国人領主であり、自分の「国」が対岸の海賊衆・因島村上氏に滅ぼされてしまったため、故郷である日本(蓬莱)を捨てて雁国の王として即位しています。 なかなか心をくすぐられるいい設定です。 ということで、本コラムは、今一度、『十二国記』の記憶を蘇らせる目的も兼ねて、小松氏が滅亡したのはだいたいいつ頃だったのかということを考えてみたいと思います。 なお、小松尚隆の即位以前の話は『十二国記』シリーズの内の『東の海神(わだつみ) 西の蒼海』(講談社X文庫ホワイトハート 1994)で触れられています。以下、特にことわりなく「作中」とある場合は、同書のことを指し、ページ数は同書のページを示します。 小松氏滅亡年代の推定 まず、作中の記述から確実な事柄を列挙します。