鹿子木本「源氏物語」
げんじものがたり
肥後隈本の国人・鹿子木親員が享禄二年(1529)、当時の日本を代表する文化人・三条西実隆から二千疋(二十貫文)で購入した『源氏物語』五十四帖。
この『源氏物語』は三条西実隆秘蔵の本であったが、鹿子木親員の意を受けた連歌師・宗碩がしきりに実隆に譲渡を薦めたため、ついに実隆が折れて売却されることとなった。
実隆の日記である『実隆公記』には、この『源氏物語』の奥書が記されている。そこには「藤原親員(鹿子木参川守)、数奇深切所望之間、止ムヲ獲ズ、之ヲ付与ス。外見セシムベカラズ」とあり、親員の強い要望で、やむをえず譲渡したことがわかる。また『実隆公記』によると、実隆は苦しい家計に関する妻の愚痴に悩まされており、おそらく金銭的な事情でも断れなかったのだろう。『実隆公記』八月八日条で実隆は「力無ク遣ワス、惜シムベシ惜シムベシ」と述べており、苦渋の決断であったことがうかがわれる。
この本は宗碩の門弟・宗牧の九州下向の際、親員が実隆に同じく要請していた肥後国藤崎八幡宮造営の綸旨下付とともに肥後隈本へと届けられた。
関連人物
- 鹿子木親員
- 三条西実隆
- 宗碩
その他の関連項目
参考文献
- 川添昭二 『中世九州の政治・文化史』 海鳥社 2003