山口革

やまぐちがわ

 周防国山口で生産された革製品。江戸期、特に山口革製のたばこ入れは、萩焼(松本焼)や赤間硯とならぶ萩藩の人気商品だった※1。寛永十五年(1638)に成立した俳書『毛吹草』の諸国名物の項には、周防国として「鹿皮」がみえる。皮革の産地としては、既に全国的に知られていた。

 江戸期、山口革はたばこ入れとして人気を博す。たばこ入れとは、嗜好品であるたばこの喫煙具の一つで、刻たばこを収める袋物のこと。「御蔵本日記」※2によれば宝暦元年(1751)十一月九日、「山口革御たはこ入れ」10個と「小豆革之切」1枚が江戸に送られている。徳山藩の江戸新宅用の為と、陸奥国中村藩主・相馬因幡守恕胤の発注によるものだった。その翌年にも花房近江守職朝や鍋島紀伊守直員、京極佐渡守高距らの注文を受け、山口革たばこ入れが江戸に送り出されている。

 江戸における徳山藩邸で需要のほか、諸大名からも所望されていたことが分かる。ただ史料からは代金の徴収方法も決まっていなかったことがうかがえるので、世に知られて間もない頃だったらしい。それでも約十年後の宝暦十一年(1761)三月には、大坂における徳山藩御用商人・平野屋七太郎に山口革たばこ入れを卸している。値段は白革製で七匁、黒革製で八匁だった。山口革製喫煙具の人気の広がりをみることができる。

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脚注

  • ※1:元久四年(1739)、これらの安易な国外流出を戒めている。
  • ※2 :江戸期の徳山藩(萩藩の支藩)の政務局である蔵本において記述された日記。

参考文献

  • 吉積久年 「山口革について」(『山口県文書館研究紀要』42 2015)