吉崎

よしざき

 越前の最北部、大聖寺川と北潟湖の河口部に位置する港町。加賀の安宅と越前の三国湊を結ぶ海路の中継港として、また陸路でも街道によって北陸道と結ばれる交通の要衝として栄えた。

 中世、港湾部の竹の浦や春日社を中心とする原集落などが形成され、白山信仰とも結びついて、ある程度都市的な発展を遂げていたと推定される。

 文明三年(1471)、比叡山衆徒に追われた本願寺八世・蓮如が吉崎山の山頂に坊舎を構えたことにより、吉崎は本願寺勢力の中心地となる。残された古絵図などからの推定によると、吉崎には寺内町が形成され、東西南北を門でしきられた内寺内には本坊や多屋(宿坊)が立ち並び、その東側の外寺内には従来の集落の家屋や参詣者の宿泊施設とみられる建物が点在していた。

 北陸や東海の寺院に残る由緒書によれば、この時期、多くの参詣者が各地から吉崎に訪れており、吉崎の町は彼らにより、大いに賑わったと思われる。

 また明応八年(1499)、蝦夷松前に夷浄願寺を建立した弘賢は文明三年(1471)、吉崎から奥羽に下ったといわれており、日本海航路の港である吉崎が本願寺の教線拡大の拠点でもあったことがが窺える。文明七年(1475)八月、越前一向一揆の激化により、蓮如は吉崎を去るが、その際も海路で若狭の多烏に上陸している。

 蓮如退去後も吉崎御坊は「旧跡」として多くの参詣があったが、永正三年(1506)、朝倉氏の攻撃を受けて焼滅した。

神社・寺院

  • 春日社
  • 吉崎御坊

参考文献

  • 金龍静 「第四章第五節 越前一向一揆」( 『福井県史 通史編2』 1995)
  • 仁木宏 「寺内町と城下町 戦国時代の都市の発展」 (有光友學・編 『日本の時代史12 戦国の地域国家』 吉川弘文館 2003)