徳淵

とくぶち

　球磨川デルタの先端部に位置した港町。戦国期、肥後南部の中心の一つである八代の外港として栄えた。

名和氏の対外貿易

　徳淵は相良氏以前に八代を支配した名和氏の時代から八代の外港として成立していた。１５世紀後半、名和氏は十八度もの朝鮮への使節派遣を行っており、その基地を担ったのが徳淵であったと思われる。

相良氏のもとで発展

　既に名和氏時代に対外貿易港としての性格を持っていた徳淵であったが、１６世紀、相良氏の時代となると、同氏のもとで更に活発化する対外貿易の基地として急速に発展する。

　『八代日記』※1の永禄元年（１５５８）五月十七日条には「徳渕大（火）災」とあり、徳淵に発展した町場が形成されていたことがうかがえる。

相良氏の対外貿易基地

　天文十一年（１５４２）、琉球・那覇の円覚寺全叢が「国料の商船渡越」と相良義滋に返書をしている。「国料の商船」、つまり相良氏の直属船が琉球と貿易を行っていたことがわかる。この直属船は天文七年（１５３８）、相良氏が徳淵で新造した「市来丸」であると思われ、徳淵が造船を含む貿易の基地であったといえる。

　さらに相良氏だけでなく『八代日記』にみえる商人の「かさ屋」や「森」は渡唐船を仕立てている。天文二十四年（１５５５）には１６艘の「八代船」が渡唐船として出帆するなど、琉球を経由するとみられる対中国貿易も活発に行われていた。

神社・寺院

  • 地福寺

人物

  • かさ屋

城郭

  • 麦島城　

参考文献

  • 鶴島俊彦　「中世八代城下の構造」（『中世都市研究１０　港湾都市と海外交易』）　新人物往来社　２００４

脚注

  • ※1：文明16年（1484）から永禄9年（1566）5月までの相良氏八代支配時代の日記記録。