制札(せいさつ)は「大名などの権力が、寺社や郷村、宿町などに宛てて発給し、ある特定の行為の禁止を布達することで、それらを保護しようとしたもの」(峰岸純夫 『中世 戦乱・災害の社会史』 2001)であり、他に高札、禁制、掟書、定書などの名称があるとのことです。また「カバイ」の御判と言ったりもするようです。
基本的には、
木の板に書かれた木札と、原本となる文書のセットか、もしくは原本の文書のみで発給され、発給された側は木札を掲げて制札の内容を周囲に示したようです。
制札の内容は軍勢による濫妨狼藉や強制的な徴発を禁止したものが多く、戦乱に巻き込まれた、もしくは巻き込まれることが予想される寺社や郷村、宿町などが、自分たちの安全を確保するため、領主、または侵攻軍の大将に礼銭を支払って「購入」する場合が多かったようです。
しかし、制札をもらって掲げたからといって、それだけで安全が得られるわけではなく、制札はやって来る軍勢にそのつど示さねばなりませんでした。あるお寺は制札はもらったけれど、僧侶が全員逃げていたために護摩堂が破壊されてしまっています。
ただ、軍勢に制札を示すことは、当然、略奪をしようとする連中と相対すということでした。別のお寺の坊さんは制札を示し続ける過程で、合戦に巻き込まれたり、人馬や雑物を奪われたり、身包み剥がされれたり、餓死しかかったりと悲惨な生活を余儀なくされています。それでも、最後までなんとか寺を守ることには成功しているので、効果はそれなりにあったようです。
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